出産予定日=誕生日。

朝、4時30分。
さっき帰ってきただんなさんと眠りについて数十分後。
あ、蹴られた、と思った瞬間、ぽんっという音がした。
何かで誰かが言っていた。


『破水するとき音がする』


…破水した。

念のため陣痛の間隔を測ってみる。


…すでに3分おき。



すぐに病院に電話して、だんなさんと病院へ向かう。
車の振動が大きなお腹にひびいてつらい。

病院に着くと、内診で破水を確認され
車椅子で陣痛室へ連れて行かれる。

…人生初、車椅子移動(笑)



陣痛室はもう朝だというのに、中は薄暗い。
いくつかあるベッドには他の妊婦さんもいる。


妊婦「いたいよ!!そこじゃないからっ!!(怒)違うって言ってるでしょ!!」
だんな「おまえ、痛がりすぎだからー」


痴話げんか、怖いよー。


他人のことが気になるのもつかの間。
しばらくすると少しずつ陣痛の波が大きくなってきた。
母は病院に来てからずっと私の腰をさすってくれている。
妹に何か話しかけられたけれど、
あまりの痛みに「うーん、うーん」しか言えない。



午前10時。
内診をされると陣痛の波のわりに子宮口が開かないとのこと。
陣痛促進剤を投入。
さらに陣痛の痛みが強くなる。


午後1時。
陣痛で重くなった体を引きずるように分娩室へ移動。
数メートルが数キロに思えるくらい遠い。
外へ外へとむかう赤ちゃんの力を、いきまないように逃がす。
「ふーふーふーふー」


マタニティークラスで教わったこと、役に立ったなー。
なんて今だからのんびり思えるけど。


出てきたい赤ちゃんと、まだ出してあげられないママとの葛藤。


私のほかにもお産がたてこんでいるらしく
助産師さんは要所要所に見に来るだけで、ずっとついていてはくれない。

何かあったらどうするんだ?(苦笑)


母が代わりに分娩台に転がる私の腰をひたすらさすってくれている。


途切れそうな意識の中で、先生と助産師さんが内診を始める。
「十分開きましたね、分娩しましょうか。」
母が分娩室の外に出され、いよいよ赤ちゃんを外に押し出す。
分娩開始と同時にだんなさんが到着。


「お母さん、もういきんでいいですよ。
陣痛にあわせていきんでください。はい、いきんでーー!!」
助産師さんのリードに合わせていきんでいく。

「お母さん、いきむの上手ですねー」

…上手ってなんだ?と思いながら、こっちはいきむのに必死。
どのくらいいきんでいたかわからないけれど、そのうちに

「お母さん!!!いきむのやめてー!!!赤ちゃん頭でましたよ!!!
そのまま、ふっふっふっふっ」


痛みといきむのに夢中で全く聞こえてなかった私。
だんなさんが必死の私の耳元で叫ぶ。
「赤ちゃんでてくるから、いきまないで!!」


でてきた瞬間を見せようとだんなさんは、
ふーふーしてる私にメガネをかけてくれる。

…ちゃんとかかってないー。




午後2時45分。
2990グラムの男の子を無事に出産。

酸欠と痛みで焦点があわなくて、正直出てくるところは見えなかったんだよね(涙)

それでも無事に生んであげられた安堵と嬉しさで涙が出てきた。
はじめまして、赤ちゃん。




産湯に入れてもらってバスタオルにくるまれた赤ちゃんは、
本当に真っ赤で小さくて愛らしかった。
助産師さんが私の横に赤ちゃんを置いてくれる。
「ボクは食いしん坊で甘えん坊だよー」という助産師さんの言葉どおり
おっぱいに必死で吸い付いている。
そして私と離されようものなら「ぎゃーん」と泣く。
生まれたばかりでも個性ってあるんだーと妙に感心してしまう。



分娩台で2時間の静養の後、病室に移動の準備をする。

立つどころか、歩けない。
車椅子にも座れない。


もともと貧血な私は、出産の出血量も人より多かったようで、
体を起こすのが精一杯な状態。
同じく出産を終えたお母さんは
フツーに歩いて車椅子に乗れているのに。
切ない。
けれど無理をしても仕方ないので、寝たままガラガラガラー。



…初ストレッチャー(笑)



夕飯にも手がつけられず、ひたすら横になって休息。



午後11時。
授乳の時間だと看護師さんに呼ばれる。

いやいや、歩けないから赤ちゃん連れてきてって言ったじゃん。
うまく伝わってなかったようで…。
仕方ないから、体ひきずって新生児室まで歩いていって授乳。
あーなんか廃人みたい。母は強し。。。




分娩時間、10時間18分。


無事に生まれてきてくれてありがとう。
これからよろしくね、えーる。