懐かしい泣き声。


えーると一緒に夕飯を食べていたときのこと。


外から泣き声が聞こえてきた。
ちらっと窓を除くと、同じマンションに住むママが
生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしていた。


新生児の赤ちゃんの泣き声は、何て言うか…
泣き方が違うからすぐわかる。
小さな体を震わせながら全身で泣く。
成長とともに泣き方も変化するので、ほんの一時しか耳にできない。


えーるも同じようにオギャーオギャー泣いていたはずなのに。
思い出そうとしても、いつまでこういう泣き方をしていたか
はっきり思い出せない。

えーるが生まれてから
どこにいても、
何をしていても新生児が泣いているのが聞こえると
ふと聴き入ってしまう。



戸惑い。
不安。
焦燥。
そして喜び。



入院中、赤ちゃんを見つめながらかみしめた感情がよみがえり、
一気に私を包みこむ。
包み込まれた私はその瞬間に強い力で引き戻される。


耳はちゃんと覚えている…。



これから何年、何十年たっても
新生児の泣き声を聞くたびに引き戻されるんだろう。
入院しながら過ごした1年前に…。